2強は両雄並び立たず

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「2強対決は両雄並び立たないが、3強対決は堅い決着となる」という主旨の競馬の格言がある。枠連が馬券の主流であった時代における格言だけに、強い馬が2頭いて、その馬同士のワンツーフィニッシュとなるよりも、強い馬が3頭いて、それらの中から2頭で決着する可能性が高いのは当然のことのように思える。しかしこの格言が表現せんとするのは、単なる確率論ではなく、競馬のレースにおける機微の問題であろう。

2頭の強い馬がいる場合は、どうしてもお互いにけん制しすぎてしまい、他馬に足元をすくわれてしまうことが多いのに対し、3頭の場合は他の2頭をマークするよりも、自分のリズムや型を守って走らせようという気持ちが強くなるため、それぞれが力を発揮して順当な結果に収まる。つまり、2強対決の場合は、レースの綾が生じやすいということを意味しているのである。

2強対決として、私の記憶に鮮明に焼き付いているのは、トウカイテイオーとメジロマックイーンが激突した1992年の天皇賞・春である。トウカイテイオーはデビューから日本ダービーまで無敗で駆け抜け、骨折による休養を経て、前走の産経大阪杯を持ったままで楽勝し、7戦7勝、負け知らずの戦績をひっさげてこの年の天皇賞・春に挑んできた。産経大阪杯で手綱を取った岡部幸雄騎手は、当時は辛口で知られていたにもかかわらず、「地の果てまで駆けていきそう」と手放しでトウカイテイオーを絶賛した。

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距離延びて安定感があるトーセンバジル:5つ☆

サトノダイヤモンド →馬体を見る
この馬に関しては3歳時より素晴らしい馬体であったが、ここに来て完成した。
胴部の長さから筋肉のメリハリに至るまで、これ以上の馬体を望みようがない。
Pad45star

キタサンブラック →馬体を見る
前駆が力強くなり、トモにも厚さが増して、今年に入ってパワーアップしている。
ただ、馬体を良く見せないときに走る傾向があり、今回は立派すぎるかもしれない。
Pad4star

ゴールドアクター →馬体を見る
馬体は大きく変わることなく、ほとんど調子にも変動がないことが分かる。
筋肉のメリハリという点では物足りないが、柔らかみは相変わらず素晴らしい。
Pad3star

ディーマジェスティ →馬体を見る
しっかりと立てていて、母父の影響か、馬体からは力強さを感じさせる。
皮膚が一枚厚く、距離的に心配はあるし、もう少し良くなる余地を残している。
Pad3star

アルバート →馬体を見る
典型的なステイヤーだが、馬体はパワーアップして短くても対応できそう。
馬体の柔らかみを維持していて、この馬の力を出し切れる仕上がりにある。
Pad3star

シュヴァルグラン →馬体を見る
胴部には伸びがあり、いかにもハーツクライ産駒の長距離馬という馬体になった。
顔つきから気性面も素直そうで、どんなレースにも対応できるし、自ら動けるはず。
Pad4star

レインボーライン →馬体を見る
胴部がコロンとして映るように、もうひと絞りできそうな余裕が残っている。
表情からは幼さと気性の激しさが同居しており、スムーズに走ることができれば。
Pad3star

アドマイヤデウス →馬体を見る
この馬の馬体の良さはスラリとした首の長さであり、それゆえに距離が持つ。
前駆が発達している割にトモに物足りなさがあるため、最後の詰めが甘い。
Pad3star

シャケトラ →馬体を見る
前後躯にしっかりと実が入って、馬体全体のバランスの良さは目を引く。
しかし、ステイヤーの体型ではなく、距離延長はプラスには働かないはず。
Pad3star

ファタモルガーナ →馬体を見る
コンパクトな馬体は、決して見栄えがするタイプではないが、余計なところもない。
気性的に難しいところがあるのだろう、この馬も気持ち良くレースができれば。
Pad3star

トーセンバジル →馬体を見る
スラリと伸びた手脚に、胴部にも長さがあり、いかにも長い距離が合いそう。
表情も凛々しく、賢さが伝わってくるため、距離は延びてさらに安定感が生まれる。
Pad5star

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京都芝3200m

Kyoto3200t

天皇賞春の専用コース。スタートしてから第1コーナーまでの距離は417mと長く、しかも緩やかな上りになっているため、無謀な先行争いはほとんどない。1週目は、ゆっくりと3コーナーを頂上とする坂を上って下りる。そして、スタンド前では馬を落ち着かせて、折り合いをつけることに専念する。もしスタンド前直線のペースが速くなった場合は、向こう正面が遅くなり、スタンド前直線のペースが遅くなった場合は、向こう正面が速くなる。ペース配分が重要になってくるため、騎手の腕の差が如実に表れるコースである。

菊花賞が行われる京都3000mとは距離的には200mしか違わないが、菊花賞がAコース(幅員35m)で行われるのに対し、天皇賞春はCコース(幅員25m)で行われる。そのため、天皇賞春が行われるCコースの方が4コーナーの回りがきつくなり、差し馬は外を回さざるを得ない。よって、菊花賞に比べ、天皇賞春は逃げ・先行馬がペース次第では逃げ残ってしまい、人気の差し馬が届かない可能性が高い。 道中のどこかで一旦息を入れることになるため、坂を下りながらのラストの800mのラップは速く、上がりの競馬になりやすい。それでも実質的には3200mを走るのであって、やはりスタミナがないと勝ち切ることはできない。瞬発力とスタミナの両方を兼ね備えていないと苦しい、紛れの少ない、実力が反映されやすいコースである。

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集中連載:現代のコアな競馬ファンがすなる一口馬主というものを(第23回)

Hitokuti23

不思議なもので、待つと心に決めると動きが出てくる。栗東トレセンに帰厩して、調教を積んでいたヒカルアマランサスの動きが少しずつだが良くなってきたという報告を受けた。そして、願ってもいないことに、4月8日に福島競馬場の未勝利戦に出走できるほどになったという。あまりの急展開に、無理をして出走させていないかという疑問も心のどこかに抱きつつも、レースで走れる喜びがひしひしと湧いてくる。やはりサラブレッドは、レースで走ることに意義を持って生まれてきたのだろう。それは経済的な事情ではなく(未勝利を勝ったところで一口馬主にはたかが知れている)、走ることを通して周りの人たちを喜ばせるということなのではないか。


高野友和調教師
「5日に坂路で追い切りました。テンはじっくり入って、徐々にスピードを上げていきましたが、前走と比べるとだいぶ動きが良くなり、体つきもしっかりしてきたものの、肩の出の可動域が狭いためにフットワークがもうひとつ伸びてこないですね。もう少し時間はかかるかもしれませんが、体質はしっかりしてきていますし、馬の成長に合わせながら使っていけば、フットワークが伸びてくるようになるでしょう。初戦はジリジリ脚を伸ばしてきましたが、テンのスピードについて行けませんでしたから、今回はダートを試してみようと思います。阪神にもダート1,800m(牝)の番組があり、どちらに向かうか悩みましたが、福島なら相手関係も楽になるでしょうし、2kg減の荻野極騎手を確保することが出来たので、4月8日の福島・ダート1,700m(牝)に投票させていただきました。普段から飼い葉食いが良く、物怖じしない馬なので、福島までの移動は問題ないと思います」

高野調教師からの報告メールを読んで、最後にダートの文字を見たとき、私は胃が熱くなるのを感じた。思っていたよりも早かったが、ついに来た。この連載にも書いているが、私はこの馬をダート馬として期待して出資したのである。キングカメハメハ×ヒカルアマランサスという血統的には芝向きだと思われてしまうかもしれないが、血統的にも馬体的にもダート馬だと私は考えていた。両親ともに芝で活躍した血統馬は、やはり芝のレースを中心に使われることが多く、ダートに適性があっても一度もダートを走る機会のないまま終わってしまう、または芝に走ることに慣れてしまってダートに転向できなくなってしまうケースが多いのではないだろうか。ヒカルアマランサスの場合は、幸か不幸か、芝の新馬戦で惨敗を喫したことで、2戦目からダート戦を使う選択が可能になったのだと考えると、馬生も万事塞翁が馬である。

ダートは合うのではないかという淡い期待を抱きつつ、その裏腹に、もし今回ダートでも惨敗を喫してしまうことがあれば、この先に光が見えなくなってしまう。芝でもダートでも走れない牝馬は、つまるところ走る才能がないということであり、引退の道を考えなければならない。今回の未勝利戦は、クインアマランサスにとっては単なる2戦目のレースではなく、競走馬としての分岐点になるだろう。そんな大事なレースにもかかわらず、現地(福島)まで行って応援してあげられない自分のスケジュールを呪った。それでも、私の心は福島にある。クインアマランサスよ、共に走ろう。


4枠7番の青い帽子の馬です。

Photo by fakePlace

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天皇賞春を当てるために知っておくべき3つのこと

Haruten

■1■真の名馬と真の調教師、そして真の騎手が一体となって
真の王者を目指し、古馬が集結する春の天皇賞。数々の名勝負が演じられ、過去の勝ち馬には歴戦の名馬が名を連ねる。淀の3200mという舞台で勝利するためには、真の実力を持っていなければならない。「スタミナ」はもちろんのこと、高速馬場に対応できる「スピード」、「瞬発力」、そして、「スローペースに折り合える精神力」を備えていることが求められる。このうちのどれか1つでも欠いては、天皇賞春のタイトルを手にすることはできない。もちろん、先天的な資質だけで全てを兼ね備えている馬は滅多にいないので、足りない部分は調教師によって補われる必要も出てくるだろう。 また、長距離戦であるため、騎手の腕も問われる。道中の駆け引き、ペース判断、仕掛けのタイミングまで、騎手がコントロールしなければならない(することができる)要素が多く、騎手の腕の差がレースの明暗を分けてしまうこともある。過去の勝利騎手を見てもらえれば分かるように、いずれも名手と呼ばれるのにふさわしい騎手たちである。

つまり、天皇賞春は「真の名馬と真の調教師、そして真の騎手が一体となって」、初めて勝利することができるレースである。

■2■ステイヤーはピークが長い
ステップレースである阪神大賞典での1着馬と2着馬の、天皇賞春での成績を比較してみると明確な傾向が見て取れる。

阪神大賞典1着馬の天皇賞春での成績【7・0・5・8】
阪神大賞典2着馬の天皇賞春での成績【0・3・1・14】

以下の2点が導き出せるだろう。 1)阪神大賞典での勝ち馬は、本番である天皇賞春の勝ち馬と結びつきが非常に強い 2)阪神大賞典の2着馬が、本番で逆転する(巻き返す)ことは難しい なぜこのような現象が起こるかというと、「ステイヤーのピークは長い」からである。

ステイヤーはピークの期間が比較的長いため、阪神大賞典での体調を天皇賞春でも維持することができるのである。阪神大賞典を勝った実力馬のピークが続いている以上、力負けしてしまった馬にとって逆転することは難しく、他の路線から余程の有力馬が出て来ない限り、阪神大賞典を勝った馬は本番の天皇賞春をも制する可能性が高いということになる。

■3■極限の仕上がりが求められる
天皇賞春は3200mという距離ゆえに最も苛酷なレースであり、勝つためには極限の仕上がりが求められる。ギリギリまで絞り込むぐらいの調教を施されたピークの状態において、自身の能力を100%発揮することができなければ勝つことはできない。直前の追い切りをさらっと済ませてしまっているような馬では、3200mの長丁場を乗り切ることができるのかどうか不安が残る。もちろん、休み明けの馬にとっても厳しいレースとなるだろう。

■参考として 1、前2走のいずれかで2500m以上のレースを走っていないと× 2、マイネルキッツ、ジャガーメイル、ゴールドシップの3頭を除くと、過去20年間で全ての勝ち馬は4歳馬か5歳馬 3、前走成績は5着以内が望ましい

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「馬を1頭分下げると、ゴール前では2頭分伸びる」ハイブリッド騎乗

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「馬を1頭分下げると、ゴール前では2頭分伸びる」と武豊騎手が語っていたことを覚えている。道中のポジションを少し下げてスタミナやパワーを温存することで、最後の勝負どころでは2倍の爆発力として引き出せるということである。なぜかというと、連載の第15回にも書いたように、競馬のレースには、「前半のエネルギーのロスが後半に倍になって返ってくる」という原則があるからだ。前半に余計な動きをしたり、負荷を掛けることで、それが倍になって後半にはね返ってくる。逆に言うと、前半で無理をすることなく、エネルギーを節約することができれば、後半に倍の力に膨らませて使うことができるということになる。

私たち競馬ファンは、どうしても最後の直線における攻防に目が行ってしまうが、実は競馬のレースはどれだけ道中でエネルギーをロスすることなく直線に向くことができたかで勝負の大半は決している。もっと言うと、レースの前半をどのように騎乗するかによって、ジョッキーは騎乗馬の能力を完全に引き出すこともできれば、持てる力を発揮させないままレースを終えてしまうこともある。

今でも鮮やかに思い出すのは、武豊騎手がスペシャルウィークに騎乗して勝利した、1999年の天皇賞秋のこと。

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余裕残しだがエアスピネルが5つ☆

★マイラーズC
エアスピネル →馬体を見る
休み明けにもかかわらず、相変わらずバランスと見栄えの良い馬体を誇る。
ただ、筋肉のメリハリに欠けるところもあり、余裕残しの仕上がり。
Pad5star

ブラックスピネル →馬体を見る
レースを使われて、勝ち上がるにつれて、馬体にも柔らかみが増してきた。
胴部にも長さがあり、マイル以上の距離でこそ、より力を発揮できるはず。
Pad45star

フィエロ →馬体を見る
馬体を見る限りにおいては、首差しも長く、胴部も長く、マイラーらしくない。
気性的に短い距離で力を発揮するタイプなのだろうが、スタミナは十分にある。
Pad3star

イスラボニータ →馬体を見る
年齢と共に筋肉量が増して、マイラーとしての体型に近づいてきた印象。
血統的な影響が出てきたということで、現時点ではマイルがベストであろう。
Pad4star

プロディガルサン →馬体を見る
馬体全体に伸びがあって、中距離馬のそれに近く、スタミナもありそう。
前駆の力強さに比べると、ややトモの実の入りが物足りず、詰めが甘くなる。
Pad3star

サンライズメジャー →馬体を見る
この馬が8歳まで一線で走り続けるとは思ってもいなかったが、まだ走れる。
若い頃のような筋肉の柔らかみには欠けるが、鍛え上げられた馬体は健在。
Pad3star

★フローラS
フローレスマジック →馬体を見る
筋肉のメリハリに乏しく、線の細さと共に、馬体には幼さを残している。
馬体全体のバランスは良く、血統的にも馬体以上に走っておかしくない。
Pad3star

ホウオウパフューム →馬体を見る
いかにもハーツクライ産駒らしい、伸びやかさと馬体の薄さがあり悪くない。
この馬も幼さを残している部分はあり、将来的にはもっと良くなるはず。
Pad3star

レッドミラベル →馬体を見る
前駆が非常に力強く、力感が満載であるが、腹回りが細くて寂しさがある。
ステイゴールド産駒の牝馬らしく、飼葉食いが細いところがあるのだろう。
Pad3star

アドマイヤローザ →馬体を見る
力強い立ち姿からも分かるように、胸前が厚くて、パワー溢れる好馬体。
牝馬らしからぬボリューム感が馬体にあり、仕上がりも問題ない。
Pad45star

モズカッチャン →馬体を見る
トモ高に映る馬体であるように、どちらかというとスピードに優れている。
鍛え上げられているのは伝わるが、馬体の成長をもう少し待ちたいところ。
Pad3star

ディーパワンサ →馬体を見る
マイラーかと思っていたが、馬体を見る限りにおいては距離が延びても問題ない。
馬体の細かい筋肉が鍛えられて盛り上がっており、力は発揮できる仕上がり。
Pad3star

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それでもデムーロ騎手が好きだ

Demuro

ミルコ・デムーロ騎手が皐月賞のレース後、勝った松山弘平騎手に向けて中指を立てていたシーンが話題になった。その中指に対し、どのような意味を読み取るかは競馬ファンそれぞれであり、様々な解釈があって良いと思う。私自身もそのシーンを見た瞬間は、非道徳的であり、相手を意図的に侮辱している、競馬には相応しくない風景だと感じた。なぜそこまでデムーロ騎手が怒りをあらわにするのか不思議に思い、もしかすると松山騎手のラフプレーによって勝機を失ったのかもしれないとパトロール映像を繰り返し観てみたが、たしかに進路をめぐる争いはあったものの、常軌を逸するような不利や妨害があったようには見えなかった。

その事実を確認したとき、デムーロ騎手の中指は私が最初に思ったのと違うメッセージが込められているのでは、と考えが一変した。デムーロ騎手は松山騎手を侮辱したり、悪態をついているわけではなく、「やられたよ、こんちくしょー!」という裏返しの称賛や祝福を、あの状況や場所において、彼らの間で最も伝わりやすい方法で伝えたのではないか。そう考えると、まるでだまし絵のトリックに気づき、老婆が美女に見えたときのように、デムーロ騎手の中指のシーンが微笑ましく思えてきた。

そういえば、デムーロ騎手の行動が物議をかもしたのは、2003年の皐月賞をネオユニヴァースで勝った瞬間、隣で最後まで競り合ったサクラプレジデントの田中勝春騎手のヘルメットを思いっきり引っぱたいたのが最初ではなかったか。あのシーンもいろいろな解釈があったが、「ひやっとしたぜ、やるじゃねえか!」という感情の爆発であったと私は思っている。有名なヒコーキポーズについては、絶妙なボディーバランスがあるからこそできると書いた(「競馬はいつでも血の滾る」)こともあり、危険という意見はその通りだとして、私は日本の競馬に対するデムーロ騎手なりのアンチテーゼではないかと拡大解釈している。

デムーロ騎手は競馬のレースに乗ることを心から楽しんでいる。勝ったときには全身で喜びを爆発させ、馬や関係者に最大限の感謝や愛情を示し、負けたときには全力で悔しがり、頑張って走った馬を労う。それは私たち競馬ファンがジョッキーに求めている姿ではないのか。彼が馬に乗って速さを競い始めたときから、根底に流れているジョッキーとしての感情は変わらない。それはものすごく稀有なことなのではないか。日本の(良い意味でも悪い意味でも)管理された競馬社会で生きてきた騎手たちに足りない部分でもあり、それゆえにデムーロ騎手の存在は際立っているのである。こんなことを書くと、反論や不快に思われる方もいるかもしれないが、それでも私はデムーロ騎手が好きなのだ。

Photo by 三浦晃一

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フローラSを当てるために知っておくべき3つのこと

Floras

■1■前走500万下でキャリア3戦以上
桜花賞よりも距離的にはオークスに近いはずだが、フローラSの勝ち馬は過去10年間でわずか1頭しかオークスを勝ったことがない。桜花賞に間に合わなかった馬たちの最終戦であり、現時点では桜花賞組に比べて完成度が劣るからである。陣営もその辺りは承知で使ってくるはずで、オークス前のトライアルをひと叩きというより、とりあえずここを勝つことに目標を定めてきている馬が多いはず。

そこで狙ってみたいのは、前走が500万下を勝ち上がってきた馬と、フラワーCで惜敗を喫してしまい、目標を桜花賞からオークスに切り替えた馬の2パターンである。ただし、いくら前者の500万下組みであっても、キャリアが浅すぎてはいけず、最低3戦はあるべきだろう。

■2■意外と人気馬が強い
過去10年の人気別のレース着順をみてみたい。

1番人気 【5・1・0・4】 連対率60%
2番人気 【2・3・1・4】 連対率50%
3番人気 【1・1・3・5】 連対率20%
4番人気 【1・2・1・6】 連対率30%
5番人気 【0・0・0・10】 連対率0%

1番人気の馬から人気順に好結果を出しているように、意外と荒れない。3歳牝馬同士のトライアルということで荒れそうなイメージはあるが、人気馬が強い。好素質馬がここを勝つことを目標に仕上げてきたら、たとえ人気でも素直に狙ってみるべき。

■3■内枠を引いた馬
過去10年における枠順(内と外)別の着順は以下のとおり。

1~4枠 【6・6・5・60】
5~8枠 【4・4・5・82】

1~4枠の内枠が外枠よりも好成績を残している。スタートしてからすぐに第1コーナーに至ってしまう東京の2000mというコース設定を考えると、外枠よりも内枠の方がスムーズに先手を取ることができる。このレースの勝ちポジは前から10番手以内のできれば内なので、外枠からだとそのポジションはどうしても走りづらい。逆に8枠からは2頭の勝ち馬が出ているのは、どうせ外なら邪魔されずに自分のリズムを貫ける大外の方が良いということである。

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先んずれば馬をも制す


皐月賞2017―観戦記―
外枠からアダムバローズやトラスト、クリンチャーらが飛び出し、先行争いを演じたように見えたが、前半1000mが59秒0、後半が58秒8という平均ペース。芝の状態が絶好で速いタイムが出たが、決してレベルが高いわけではなく、前が止まらない馬場であったということ。先行したスピード馬たちが簡単に止まらず、後ろから行った馬たちにとっては勝つチャンスが少ないレースとなった。全体時計は昨年とほとんど同じだが、レースレベルは昨年の方が圧倒的に高い。それは日本ダービーの結果が出れば分かるはずである。

勝ったアルアインは、レースセンスの良さと持って生まれたスピードの絶対値を生かして皐月賞馬となった。一度だけ敗れたシンザン記念は前が詰まってのものだけに、これまでに力負けしたレースはなく、人気の盲点になっていた。良血のディープインパクト産駒であり、勝たれてみると強かったということになるが、今回は他のどの馬よりもアルアインのスピードが十全に発揮されたことが大きな勝因であった。日本ダービーは脚をためて、爆発力が問われるレースになりやすいため、チャンスがなくはないが、あくまでも挑戦者の1頭として考えるべきである。

松山弘平騎手はこれまで惜しいところでG1勝利を逃してきたが、持ち前の積極的な騎乗で晴れてG1ジョッキーとなった。先んずれば人を制すと言うが、今回のレースはスタートからゴールまでとにかく無心に先行したことが功を奏した。小回りの中山競馬場の芝2000mコース、前が止まらない絶好の馬場、アルアインの先行力とスピード、そして松山騎手の積極的な騎乗の全てが噛み合って、最後のコンマ数秒差の勝負を制してみせた。チャンスを自ら逃した騎手も多くいた中、勝つときは全てが上手く行くものである。

ペルシアンナイトは内から鋭く伸び、あと一歩のところまで勝ち馬を追い詰めた。この2着は騎手の腕で持ってきた2着である。序盤はゴチャつく形になり後方から進んだが、ペースが遅いことを見極めて、内の進路が開いたところを見逃さずにポジションを上げたミルコ・デムーロ騎手の好プレーが光った。目で見るほど簡単ではなく、あのタイミングで馬を動かし、馬場の悪いとされる内側を走って上がってゆく勇気は称賛に値する。さすが連対率4割を誇る、リーディングジョッキーに相応しい見事な騎乗であった。

タンビュライトも武豊騎手の好判断に導かれての3着。速い脚のないこの馬を上位に持ってくるには、思い切って先行するしかないと最初から決め打っていたはず。レースの流れに乗り、一旦は先頭に立つかの勢いであったが、最後は上位2頭の底力に屈してしまった。欲をいえば、もう少し力の要る、時計の掛かる馬場状態であれば、勝ち負けに持ち込めたかもしれない。切れ味勝負になる日本ダービーはこの馬にとっては厳しい。

レイデオロは昨年暮れ以降の休み明けという経緯があったからか、道中はほぼ最後方からレースを進め、最後の直線だけの競馬に徹した。これでは到底勝てないが、最後の直線で見せた鋭い脚は、ひと叩きされて体調が上向けば、日本ダービーでは大きな武器となる。次はもう少し前目のポジションを走れるだろうし、今回の皐月賞から日本ダービー馬が出るとすると、この馬が最も勝利に近いのではないだろうか。

スワーヴリチャードについては、馬券を買っていた私のバイアスが掛かっていると思ってこの先は読んでもらいたい。四位騎手は好スタートを決めて前進気勢のある馬の手綱をなぜか引いて少しずつ下げ、自らポジションを悪くしてしまい、こともあろうか最終コーナーでは大外をぶん回した。一体何のために共同通信杯で前に行く競馬を試してみたのか、道中でペースの遅さに気づなかったのかなど、数々の疑問が湧いてくる。内枠をそのまま生かし、スワ―ヴリチャードの行きっぷりに任せて乗っていれば、アルアインの後ろにつけて、最終コーナーをピッタリと回り、勝ち負けに持ち込めたのではないだろうか。馬に乗るのが上手い(綺麗)、馬のことを良く知っていることとレースで勝てることは違うのだ。結果論ではなく、あまりにも稚拙すぎる騎乗であった。

1番人気に推された牝馬ファンディーナは、最後まで牡馬に抵抗したが力尽きた。大きなフットワークの馬だけに、小回りコースで馬群の内を窮屈そうに走っていたが、最終コーナーでは馬群の外に持ち出せて、決してチャンスのないレースではなかった。それでも競馬ファンの期待に応えられなかったのは、この馬自身の体調が完全ではなく、1週間でも出走を遅らせて皐月賞を選んだほど未完成な状態であったからこそ。今年に入ってからデビューした馬であり、将来性の極めて高い馬であるからこそ、陣営としては桜花賞や皐月賞はスキップして、オークスを目指して調整したかったというのが本音のはず。皐月賞を使ったことが、ファンディーナにとって良い経験となるか、それとも大きな傷となってしまうのか、前者となることを心から願う。

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時代が変われば、ステップレースの意義も変わる。

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かつて共同通信杯は、日本ダービーの試走としての位置づけであった。特に関西馬にとっては、東京競馬場のコースを一度でも本番前に経験しておくことがプラスになるという発想のもと、実際にナリタブライアンやジャングルポケットが共同通信杯をステップレースにして頂点へと登り詰めた。しかし、それ以降、パタリと扉が閉じる音がしたように、共同通信杯の勝ち馬が日本ダービーにつながることはなくなった。それだけではなく、距離もローテーション的にも近い皐月賞ですら活躍できないという異常事態となり、もはやステップレースとしては機能しないのではと見なされるようにさえなった。空白の10年間がある。

ところが、時代が変われば、ステップレースの意義も変わる。2012年にゴールドシップが共同通信杯を勝ち、その後、皐月賞と菊花賞の2冠を制したのをきっかけとして、イスラボニータとディーマジェスティが皐月賞馬となり、この5年間において共同通信杯の勝ち馬から3頭の皐月賞馬が誕生することになった。しかも、2015年に至っては共同通信杯を勝ったリアルスティールは残念ながら皐月賞は2着であったが、2着したドゥラメンテが皐月賞馬になり、続けて日本ダービーの栄光までも手にしたのである。これだけでも、最近の共同通信杯が皐月賞や他のクラシックレースと連動してきていることが分かるだろう。

なぜこのような変化が起こったかというと、最初は偶然にも成功者が出たからである。共同通信杯からぶっつけで本番に臨んだゴールドシップが皐月賞を快勝したことで、たとえ2か月の間隔が開いたとしても、きっちりと仕上げ直すことさえできれば勝負になるということに、他の陣営も改めて気づいたのではないだろうか。共同通信杯が日本ダービーのための試走としてではなく、皐月賞へ向けてのステップレースのひとつとして、はっきりと認識されたということである。

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筋肉のメリハリも文句つけようがないレイデオロ:5つ☆

カデナ →馬体を見る
母父フレンチデピュティの影響を感じさせる前駆の強さがあり、パワー溢れている。
トモの肉づきや体が全体的に幼いところもあり、この先の成長が期待できる。
Pad4star

マイスタイル →馬体を見る
腹回りがふっくらとしているように、未完成でもうひと絞りできそうな馬体。
胴部には十分な長さがあって、スタミナという点では距離が延びても心配ない。
Pad3star

アダムバローズ →馬体を見る
前後躯にしっかりと実が入って、全体のシルエットやバランスは申し分ない。
やや皮膚が厚いところがあるが、それ以外の点では走るハーツクライ産駒。
Pad4star

ファンディーナ →馬体を見る
とても牝馬とは思えない力強い馬体で、牡馬に入っても他を圧倒している。
ディープインパクト産駒の牝馬としては、馬体のスケールは最も大きい。
Pad45star

ペルシアンナイト →馬体を見る
他のメンバーに比べると、幼さを感じさせる、未完成な馬体と見える。
毛艶や筋肉の柔らかさは良いので、現時点での力は出し切れるはず。
Pad3star

アルアイン →馬体を見る
馬自身の幼さが伝わってくる立ち姿であり、現時点での完成度は高くない。
とはいえ、気性面における素直さは表情から伝わってきて、力は出せるはず。
Pad3star

スワ―ヴリチャード →馬体を見る
全体的な馬体のバランスが良く、特にここが良い材料ということではない。
顔つきからも闘争心が漲っており、気持ちが入ってきていることが分かる。
Pad4star

アメリカズカップ →馬体を見る
やや細さを残している馬体で、手脚は長く、全体的にはスラリとしている。
前走道悪を激走した疲れが残っているのか、反動が少しあるのかも。
Pad3star

タンビュライト →馬体を見る
この馬は使い込んでも馬体が変わることなく、いつでも走れる仕上がりにある。
ルーラーシップの産駒らしく、馬体に力強さもあり、この先の活躍を期待。
Pad4star

ウインブライト →馬体を見る
前走を快勝した疲れや反動もなく、馬体としては前走よりも良くなってきている。
ふっくらとして、筋肉の付き方もしっかりして、再び好走が見込まれる。
Pad4star

レイデオロ →馬体を見る
胴部には十分な長さがあって、距離は2000m前後が合っているはず。
休み明けにしては毛艶も素晴らしく、筋肉のメリハリも文句つけようがない。
Pad5star

アウトライアーズ→馬体を見る
やや首が立ぎみになっている立ち姿は、力んでしまう馬の特徴である。
だからこそ、距離はあまり持たないため、1600m前後のレースがベスト。
Pad4star

サトノアレス →馬体を見る
この馬も首の位置が高く、肩に力を入れて走ってしまうところがあるかも。
道中は折り合いをつけてリラックスして進むと最後伸びる馬であろう。
Pad4star


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中山芝2000m

Nakayama2000t1

スタンド前の直線からのスタートとなり、第1コーナーまでの距離は405mとやや長め。スタート後150mぐらいの地点から上りにかかり、1~2コーナーの中間まできつい傾斜は続く。そのため、前半はそれほど速いペースにはならない。さらに、2コーナーから向こう正面まではなだらかな下りで、3コーナーからは坂下にかけて急に下る。その勢いをつけて最後の直線の坂を駆け上がるため、先行した馬も容易には止まらず、後ろから行った馬は苦戦を強いられる。

かといって、スピードだけで押し切れるわけではない。皐月賞は開催最終日に行われるため、ある程度馬場が柔らかく力の要る状態になっていることが多く、スタミナとパワーの支えがない馬は、最後の直線で脱落してしまうことになる。

勝負どころの3~4コーナーは、典型的なスパイラルカーブで、後ろから差を詰めるのが難しい。また、ぎゅうぎゅうの団子状態で回ることになるため、下手をすると内で揉まれ込んでしまう馬も出てきたり、外を回された馬はかなりの距離ロスを強いられる。

このように、基本的には内を通った先行馬に有利なコースであるが、小回りのコーナーを4つも回るという設定のため、かなりの紛れが生じるのも事実である。騎手の技量が問われるコースとも言える

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皐月賞を当てるために知っておくべき3つのこと

Satsuki1

■1■弥生賞の勝ち馬は、皐月賞では勝てない!?
弥生賞は皐月賞と同じ中山2000mという舞台で行われるが、弥生賞を勝って、そのまま皐月賞をも制する馬は思いのほか少ない。その世代の素質馬が集結するハイレベルの弥生賞を制した馬は、普通に考えて、弥生賞と同じ走りができれば皐月賞はほぼ当確である。それでも、私が競馬を始めてからの25年間で弥生賞と皐月賞を連勝した馬は、アグネスタキオンとディープインパクト、ヴィクトワールピサの3頭の名馬しかいない。なぜこのような現象が起こるかというと、2つの理由が考えられる。

ひとつは、弥生賞と皐月賞では馬場状態が全く異なるからである。

皐月賞における、過去10年のラスト3ハロンの上がりタイムを並べてみたい(府中で開催された平成23年は除く)。

平成18年 35.7
平成19年 35.9
平成20年 35.2
平成21年 35.6
平成22年 35.9
平成24年 38.4
平成25年 35.9
平成26年 35.3
平成27年 34.7
平成28年 35.6

平成17年と27年は速い上がりの瞬発力勝負になっているが、それ以外の年はある程度、終いの掛かる競馬になっている。これは道中のペースだけではなく、皐月賞時の馬場によるところが大きい。皐月賞当日の馬場は、最終日ということもあって、全体的に重くなっているのが通常である。特に、最も良く使われる3~4コーナーにかけては、見た目以上に馬場の傷みは激しく、当然力の要る馬場となっている。

つまり、手脚の軽い、瞬発力で勝負したい馬にとっては足かせとなり、逆にダート血統に代表されるようなパワー優先の馬にとっては願ってもいない、ほぼ1ヶ月前に行われた弥生賞当日の馬場とは全くと言ってよいほど異なった重い馬場になってしまうのである。

もうひとつは、弥生賞はかなりの状態に仕上がっていないと勝てない、その上、弥生賞では厳しいレースを強いられるということである。

クラシックを狙う有力馬が一堂に会する弥生賞は、当然のことながら、中途半端な仕上がりでは勝つことはできない。弥生賞を勝つためにはかなりの仕上げを施さなければならず、本番前に仕上げられた(仕上がってしまった)馬は、本番に向けて下降線を辿ってしまう。サラブレッドのピークはそれほど長くない。つまり、弥生賞を勝つために仕上げてしまうと、そのあとが続かないということである。さらに、それまでは楽な相手と楽な競馬しか経験してこなかった馬が、弥生賞で初めて厳しいレースを強いられるので、その肉体的、精神的な反動が次のレースで噴出してしまう。

その典型的な例は、平成12年の弥生賞を制したフサイチゼノンではないか。田原成貴元調教師と関口オーナーの間で一悶着あった馬であるが、フサイチゼノンは弥生賞の時点で既に仕上がってしまっていた。田原調教師はフサイチゼノンにかなりの素質を感じていただろうし、初年度である厩舎を盛り上げるためにも、弥生賞も勝って本番に臨みたかったに違いない。しかし、その勝ちを焦る気持ちが、フサイチゼノンを追い詰めてしまったのだ。肉体的にも精神的にもピークを過ぎてしまったフサイチゼノンは、もはや皐月賞に出走する状態にはなかった。関口オーナーに相談をしなかったのは田原元調教師の落ち度だが、出走を取りやめたのは英断であったと思う。

フジキセキ ダンスインザダーク フサイチゼノン アグネスタキオン
カミノタサハラ

以上は、弥生賞を勝った後に故障を発生した馬たちである。厳しいレースである弥生賞を勝つことは、高い素質、能力を持つことの証明であるが、一方で失うものも大きい。そういう意味で、弥生賞馬はまず疑ってかかるべきである。

■2■皐月賞馬の条件
皐月賞馬に求められる条件は、以下の4つ。

スピード
パワー
器用さ
完成度

まず、「スピード」については、中山競馬場の内回りを使うコースは先行馬に有利であり、前にポジションするために秀でたスピードが求められる。スタミナに関しては、2000mまでこなせるマイラーであれば、十分に勝負になるはず。

「パワー」については、上にも述べたとおり、皐月賞は最終日に行われるため、馬場がかなり重くなっていることが多い。そのため、荒れ馬場をこなせるパワーが必要となる。さらに、1周1666m、直線310mという小さなスケールのトラックで行われるため、上手に立ち回りながら流れに乗ることのできる「器用さ」を備えているかどうかも問われる。

また、「完成度」の高い馬ということも挙げられる。その傾向は年々強くなってきており、この時期においてあらゆる面において完成されていなければ、このレースを勝つことは難しい。素質があり、なおかつ完成度が高いことが求められる。

■3■参考データとして
・前走が1800m未満の馬は×
・2月以降に1400m以下の短距離を一度でも使っていた馬は×
・連対率が50%を超えていなければ×

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無敗とは弱点が分かっていないということ


桜花賞2017―観戦記―
大外枠からカワキタエンカが他馬と馬体を離しながら先頭に立ち、その後ろにヴィゼットジョリーがスッと付け、2番手以降のペースは落ち着いた。前半マイルが46秒5で後半が48秒0というタイムだけを見ると、ハイペースのように思えるがそうではなく、雨が降ったことで馬場が緩んで、それだけ上がりの時計が掛かったということである。それを差し引くと、遅すぎもせず速すぎもしない、ごく平均ペースでレースは流れた。ある程度前の位置でレースを進められた馬たちが上位に来たように、切れ味で勝負する馬たちには厳しい馬場と展開であった。

勝ったレーヌミノルは、距離が延びてから勝ち切れないレースが続いていたが、ここ一番の大事なレースにて展開や馬場などの条件がようやく全て揃った。この馬の持ち味は天性のスピードとパワーであり、瞬発力勝負になると苦しく、またあまり速いペースになってしまうとスタミナ不足ゆえの詰めの甘さを見せてしまう。ところが、今回は折り合いも見事につき、平均ペースの展開とパワーが問われる馬場になったことで、持てる能力を十全に発揮してみせた。乗り替わった池添謙一騎手の、サスペンションの利いた、当たりの柔らかい騎乗も素晴らしく、直線に向いてからゆっくりと待ってから追い出した冷静さは、これまで数々の名馬に乗って大舞台で結果を出してきた経験から得たものである。

リスグラシューは前走のチューリップ賞をひと叩きされ、体調が一変していた。このようなステイヤータイプの馬は叩かれて良くなることが多く、型通りに良化したということだろう。欲をいえば馬体がもう少し大きくなってもらいたいが、オークスに向けて距離が延び、レースを使いつつさらに調子を上げる可能性が高いことを考慮に入れると、この馬が戴冠に最も近い馬である。武豊騎手も先週の大阪杯の勢いをそのままに、リスグラシューの良さを素直に引き出してみせた。

ソウルスターリングは最後の直線に向くまでは、理想的なレースができていた。ところが、いざ馬を追い出してみると、さっぱりと伸びない。伸びないどころか、馬がノメってしまい、真っ直ぐに走ることができないほど。クリストフ・ルメール騎手も鞭を左右に持ち替えてみて必死に対応したが、前の馬を捕らえられず、さらに後ろから来た馬にも差されてしまった。ソウルスターリングのように綺麗なフットワークで走る馬ほど、こうした緩んだ馬場を苦にするのは確かだが、私たちの思っていた以上に馬場が合わなかったようだ。無敗とは弱点が分かっていないということでもあり、無敗馬の馬券を買う恐ろしさを思い知った。

カラクレナイは道中で脚をしっかりと溜め、最後の直線に向いてからゆっくりと追い出し、最後まできっちり伸びた。展開と馬場がこの馬には向かなかったが、この馬の良さや能力は完璧に出し切っての敗北。田辺裕信騎手もさすがの騎乗である。切れ味で勝負する馬だけに、オークスに向けて距離が延びるのはプラス材料にはならない。どちらかというと、NHKマイルCの方がチャンスは大きいのではないだろうか。2番人気に推されたアドマイヤミヤビは、道中から全く進んで行かず、最後は大外を回す形になり、見せ場すら作ることができなかった。前進気勢に欠けるタイプの馬であり、気性的にも今回のような馬場が明らかに合わなかったということだ。

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