この時期の牝馬にとっては


阪神ジュベナイルフィリーズ2018―観戦記―
2番人気のクロノジェネシスが出遅れ、1番人気のダノンファンタジーも抑えて後方から進み、スタンドがやや騒然とする中、前半800mは47秒0、後半は47秒1というフラットなペースで流れた。最後の直線の長さを考えると、どのポジションで走った馬にとっても有利不利のない展開となり、その分、馬群から離れてストレスなく走った2頭での決着となった。2歳牝馬にとっては、多少の距離ロスがあったとしても、馬群の中で気を遣って走るよりも、伸び伸びと外を回った方が良い結果が出ることが多いのだ。

勝ったダノンファンタジーは、2着馬とは半馬身差ではあったが、どこまで行っても抜かされないだけの手応えが残っており、完勝と言ってよいだろう。新馬戦こそグランアレグリアに敗れたが、その後、馬体も成長してパワーアップしている。肉体の完成度が高く、気性が前向きであり、レースに行ってきっちりと力を出し切れる真面目な牝馬でもある。ウオッカやブエナビスタなど、阪神ジュベナイルフィリーズを制した名牝ほどの素質は認められないが、来年の桜花賞に向けては最有力候補に躍り出た。

クリスチャン・デムーロ騎手はテン乗りにもかかわらず、腹を決めて後方からダノンファンタジーを走らせたことが吉と出た。正攻法で攻めていたら、もっと力んで走っていたかもしれず、これほどの切れ味を発揮できたか分からない。一回性の騎乗で最良の選択をして、結果を出してしまうのはさすがである。昨年のG1ホープフルステークスでもタイムフライヤーを後方から導いて勝利したように、これだけ動じずに後ろから行けるのは、馬を瞬時に動かせて、追える自信があるからだろう。勝利ジョッキーインタビューにて、日本語を少し話そうとしたところに、彼の意志を垣間見た気がした。

クロノジェネシスは、出遅れたことが結果として良かったのかもしれない。後方の外から行った馬たちのワンツーとなったように、この時期の若い牝馬にとっては、ペースや馬場や距離よりも、精神的なスタミナをロスすることなく走れる影響の方が大きい場合がある。馬群から離れたポジションを気持ち良く走られることが、ラストの切れ味につながるのだ。最後の直線では馬が苦しがって左にもたれ、真っ直ぐ追えなかったのは残念だが、最後まで良く食い下がっている。あと少しのところまでG1に手が届きかけていたのだから、北村友一騎手にとっても悔しい騎乗だったはず。

上位2頭の切れ味に屈してしまったビーチサンバも、最後まで良く伸びている。結果として出し抜けを食らってしまった形となったが、先々へとつながる内容であった。福永祐一騎手も道中は完璧に折り合って進めていたし、満点とは言えないものの、80点の騎乗で力を出し切った。100点の騎乗ができないと勝てないのがG1レースであり、あえて言うならばビーチサンバを勝たせるためにはもうひと呼吸、いやふた呼吸早めに追い出しても良かったかもしれない。もちろん、外から出し抜けを食らったという結果を受けての結果論である。

| | Comments (0)

馬の性格や心理状態も観る

Jiromaru

先日、東京の両国で行われた「日本ウマ科学会」に参加するために北海道からやってきた獣医師さんと、ちゃんこ鍋を突きながら競馬の話をしました。僕がオーストラリアにメルボルンカップを観に行っているとき、彼はちょうどブリーダーズカップを観にアメリカに行っていたそうです。お互いに海外の競馬を見て得た情報を交換しつつ、新しい種牡馬やその産駒の出来から、出産時の大きさの話、日高の現状まで語りました。僕にとって、生産の最前線で働く彼の意見や見識は貴重です。

その中で、馬の気性の話になりました。アメリカの馬たちは、ダート競馬で土を全身に受けながらひたすら前へ前へと突き進むことが求められますので、気性的には激しいものを持っている馬が多い。それは生産の配合の段階から、育成・調教、そしてレースに至るまでの中で、そのようなメンタリティへとつくられていきます。逆にヨーロッパの競馬は長距離を走る馬が多いので、ゆったりとした気性でリラックスして走れる気持ちの穏やかな馬が求められます。それに応じて、生産から育成調教までが1本の線となり、つながっていきます。

それにしても、と話をさえぎるようにして私は言いました。

「メルボルンカップのパドックを見て驚いたのは、どの馬もまったく入れ込んだり、チャカついたりしていなかったことです。日本から参戦したチェスナットコート以外は」

これは決して大げさではなく、私が日本のパドックで見て、消していくタイプの馬はただの1頭もいなかったのです。どの馬もゆったりと歩けていて、厩務員さんに変に甘えることもなく、汗ひとつかいていません。これから激しいレースを走る馬とは思えない平常心を保っているのでした。

パドックで馬の心理状態を見て、それをよりどころにする僕にとっては、明らかに悪くて消せる馬が1頭もいなくて困り果てました。ヨーロッパやオーストラリアの超一流のステイヤーたちには、私のパドック理論は通用しなかったのでした。結局、長距離戦での実績を評価して、ベストソルーションという人気馬に賭けましたが、ハイペースに巻き込まれてしまい8着に敗れてしまいました。勝ったクロスカウンターはもちろん、敗れた馬たち全てがしっかりと歩けていて、どの馬を本命にしてもおかしくないほどだったのです。

なぜそのようなことが起こったのでしょうか。メルボルンカップの出走馬がステイヤーだからという理由だけではないと思います。オーストラリアは短距離戦が中心の競馬であり、ほとんどの馬たちはスプリンターです。他のレースの出走馬を見てみても、たとえスプリンターであっても、同じように落ち着いてパドックを歩いていたのです。

馬が感じているストレスが全く違うのだと僕は思いました。日本やアメリカの馬たちは、おそらく日常的にストレスフルな環境の中で過ごしているのです。さらにレースに臨むにあたって、そのストレスはピークに達します。どこかが痛かったり、苦しかったり、調子が悪かったりする馬は、得にパドックで走りたくないという気持ちを全身で表現します。それに対して、ヨーロッパやオーストラリアの馬たちは、普段からリラックスして過ごしており、人間との信頼関係も厚いのではないでしょうか。それがパドックでの姿に如実に表れていたのです。

前置きが長くなりましたが、その馬の気性や性格など、立ち写真からでは分からない情報が確かにあります。特に2歳戦などは、各馬に関する情報が少ないため、立ち写真以外も見る必要が出てくるのです。その馬の気性や性格などを知るために、私はまずパドックを見ることにしています。新馬戦から時系列的にパドックを見てみることもあれば、前走のパドックを見て分かることもあります。レーシングビュワーではいつでもパドック映像を観られるサービスがあり、とても便利ですね。

今週行われる2歳G1阪神ジュベナイルフィリーズに出走するメンバーの馬体を見渡してみると、どの牝馬たちも目移りするほどに素晴らしい馬体を誇っています。グレイシアは牝馬らしからぬ重量感に溢れ、いかにもパワーがありそう。シェーングランツは姉ソウルスターリングよりもコンパクトに出ていますが、それゆえにより切れ味は鋭そう。ダノンファンタジーもコロンとした中にまとまりがあって、安定して力を出し切れそう。ビーチサンバはフサイチエアデールの仔にしては全体に長さがあって、将来性が高そうです。

これだけ素質や将来性の高い馬たちが揃うと、立ち写真だけでは本命を決めかねるのが正直なところです。そこで次に見たいのはパドックでの姿です。パドックにおける立ち振る舞いには、その馬の気性や性格が出ますので、それらを含めて予想してみましょう。各馬のパドックの動きを見て、とても落ち着いていて、苦しいところもなく、レースに行ってもジョッキーの指示を素直に聞いて反応することができそうだと最も感じさせてくれたのはビーチサンバです。調教の動きも素晴らしく、本命に推したいと思います。立ち写真とパドックでの立ち振る舞い、そして調教の動きを見ると、この馬が好走しそうなイメージしか湧きません。

Hanshinjf2018wt


| | Comments (0)

阪神ジュベナイルFを当てるために知っておくべき3つのこと

Hjf

■1■2つの経験
平成3年より従来の阪神3歳Sは牝馬限定に変更され、さらに平成13年より名称を「阪神ジュベナイルフィリーズ」と改められた。わずか数戦のキャリアで臨んでくる馬がほとんどで、各馬の力の比較が難しい。実はこれといった傾向はないのだが、以下2つの経験をしている馬にとっては、かなり有利なレースになる。このレースを勝つためには、いずれかを経験していることが望ましい。

1、1600m以上の距離
2、坂のあるコース

「早熟の短距離馬」が多く出走してくるため、このレースに臨むまでのステップとして、1600mよりも短い距離を使ってくる馬が多い。これまでにマイルの距離や直線に坂のあるコースを走ったことがない馬たちが、いきなりG1レースの厳しい流れの中に放り込まれ、直線に坂のある1600mのコースを走ると、確実にスタミナ切れを起こすことになる。1600m以上の距離、もしくは直線に坂のあるようなタフなレースを走った経験がないと、このレースで勝ち切ることは難しい。

■2■抽選をクリアした馬の台頭
これは来週の朝日杯フューチュリティSにも当てはまることだが、抽選をクリアした馬、滑り込み出走が叶った馬たちには着目すべきである。それは運が良いからということではなく、彼ら彼女たちの「ローテーション」と「成長曲線」に秘密が隠されているからだ。

まず「ローテーション」については、抽選をクリアしてきた馬は、これまでの出走過程において無理を強いられていない馬が多いということである。多いと書いたのは、全ての馬がそうではないからである。本番に出走する権利を取るために、何度もレースに出走してそれでも抽選待ちになってしまった馬もたくさんいるはずだ(こういう馬は能力的に疑問符がつく)。そのあたりは1頭1頭を検証する必要があるが、例えば2007年のトールポピーはキャリア3戦、ゴスホークケンは2戦、レーヴダムールに至ってはわずか1戦であった。そして、2011年はキャリア1戦のジョワドヴィーヴルがこのレースを制した。

これが何を意味するかというと、これらの馬たちは、本番であるG1レースに合わせたローテーションを組んで走らされてきたのではなく、自分たちの仕上がりに合わせて大事に使われてきたということである。人間の都合ではなく、馬優先の余裕を持たせたローテーションであったということだ。あくまでもその延長線上に、たまたまG1レースがあったということに他ならない。だからこそ、そこまでの過程において無理をさせてきていないからこそ、馬に余力が十分に残っているということになる。

次に「成長曲線」についても、余裕を持たせたローテーションということとリンクしてくる。馬の仕上がりに合わせるとは、馬の成長に合わせたローテーションということである。特に若駒の間は、レースを使うことによって、成長を大きく阻害してしまうことがある。2歳戦~クラシックにかけて、数多くのレースを使うことは、マイナス材料にこそなれ、決してプラス材料にはならない。レース経験の少なさは、馬の能力と騎手の手綱で補うことが出来る。つまり、本番のレースに出走するために、馬をキッチリ仕上げて勝ってきた馬たちに比べ、成長を阻害しない程度のゆったりとした仕上がりで走ってきた馬たちは、上積みが見込めるばかりではなく、本番のレースへ向けて上向きの成長カーブで出走してくることが可能になるのだ。

これらのことからも、余力が十分に残っていて、上向きの成長カーブを辿っている馬が、もし抽選をクリアして出走することが出来たとしたら、本番でも好走する確率が高いことは自明の理であろう。これが2歳戦からクラシック戦線においては、抽選をクリアして出走してきた馬、滑り込みで出走してきた馬には大いに注目すべき理由である。

■3■関東馬とっては厳しいレース
この時期の牝馬にとって、長距離輸送をしてレースに臨むことは条件的に厳しい。よって、関東馬がこのレースを勝つには、関西に一度遠征した経験があるか、もしくは実力が一枚も二枚も上でなくてはならない。現に過去10年で、初長距離輸送でこのレースを制した関東馬は3冠馬となったアパパネと後にNHKマイルCを制したメジャーエンブレム、オークスを勝つことになるソウルスターリング、その他ショウナンアデラである。彼女たちぐらいの実力を持っていないと、初めて長距離輸送をして、並みいる関西馬たちを倒すことはできない。逆に言うと、このレースを勝った関東馬は相当な実力の持ち主であるということになる。


| | Comments (0)

砂のアーモンドアイ


チャンピオンズカップ2018―観戦記―
最内枠から唯一の牝馬アンジュデジールがハナを主張し、そのすぐ後ろに1番人気の3歳馬ルヴァンスレーヴが続いた。積極的に前に行くかと思われたサンライズソアがそのさらに後ろに控えたことで、前半800mが49秒6、後半800が48秒2という超スローペースで、前に行った馬たちにとって有利な流れになった。有力馬が勝負どころから外を回して追い上げる中、ぽっかりと開いた最内を突いたウェスタールンドが漁夫の利を得た形となり2着。レコード決着ではあるが、先週のジャパンカップと同様に、内容としては前残りのやや単調なレースであった。

ルヴァンスレーヴは56kgを背負って歴戦のダート馬たちを完封したのだから、この先、国内には敵はいないだろう。調教ではそれほど走るタイプではないため、案外使い減りすることなく、長く走れる可能性が高い。また、馬の気持ち(ハート)が強く、燃え尽きてしまうこともない気がする(こればかりは馬にしか分からないが)。カネヒキリやクロフネのように3歳時から頭角を現した名ダート馬と同じもしくはそれ以上に、ルヴァンスレーヴのダート馬としての未来は明るい。来年は海外へと飛び出して、ドバイワールドカップやブリーダーズカップクラシックなどにおいて、世界の強豪を相手に世界を変えるような走りを見せてもらいたい。

ミルコ・デムーロ騎手は、秋のG1シリーズでは勝ち星から遠ざかっていたが、ようやくデムーロ騎手らしい横綱相撲で勝利してみせた。前日のチャレンジカップをエアウインザーで圧勝し、その勢いをそのままルヴァンスレーヴに当てはめたような積極的な騎乗。デムーロ騎手が騎乗して負けていないように、まさにルヴァンスレーヴとは手が合っている。ルヴァンスレーヴの前向きさとデムーロ騎手の攻める気持ちの波長が合うというべきか。デムーロ騎手も乗っていて気持ち良いはずだし、ルヴァンスレーヴも安心して走っているはず。「ダート界のアーモンドアイだね」とデムーロ騎手はコメントしていたが、そういえばディープインパクトと同世代のカネヒキリは「砂のディープインパクト」と呼ばれたこともあった。

ウェスタールンドは最初からこのような競馬を狙っていたのだろう。外枠から一旦最後方まで下げ、内ラチ沿いを走り、外に膨れやすい最終コーナーで開いた内を突く。狙っていたとおり、まさかこんなに上手くはまるとは思ってもいなかっただろうが、捨て身の作戦勝ちであった。他馬と比べて最短距離を走ったにしても、2着まで追い上げたのは力をつけている証明である。

サンライズソアはもう少し積極的に乗っても良かったと感じる。先々を見据えて抑える競馬を試みたのだろうが、今回のペースを考えると、もう1段前に行っていれば、もう1つ着順を上げることができたかもしれない。前走、前々走と積極的に行ったことでハイペースに巻き込まれ、惜敗を喫してしまった影響もあったのか。今回もまたポジションとペースが裏目に出てしまった。

| | Comments (0)

首の太い馬の方が乗りやすい

Jiromaru

11月頭に行われたメルボルンカップを観戦にオーストラリアに行ったとき、現地で頑張っている日本人ジョッキーに話を聞く機会がありました。僕たちにはあまり知られていませんが、オーストラリアで活躍している日本人騎手は多くいるのです。彼ら彼との話の中で、サラブレッドの馬体について話が及びました。馬の背中に乗って、一緒に走っている立場からの馬体の見かたは新鮮でした。僕の著書「馬体は語る」をプレゼントすると、目を皿のようにして読んでくれて、「競馬学校ではここまで詳しく馬体について教えてもらわないので新鮮です」と言ってくれました。それぞれが違う方向から馬体を見ているので、お互いに新鮮なのでしょうね。

彼らの話の中で印象に残っているのは、「首の太い馬の方が、細い馬よりも乗りやすい」ということです。「首の細い馬は乗っていて頼りないんです。首の太い馬の方が、乗っていて安定感がありますよ」というのが理由だそうです。なるほど、首が太い馬は胴部もがっしりとしているため、パワフルで安定感があって、ジョッキーとしては乗りやすいのですね。

僕は首が長くて細い馬の方が乗りやすいのではないかと想像していたのは、ベガ(父トニービン、母アンティックヴァリュー)という馬のことがあったからです。あのアドマイヤベガやアドマイヤドンの母であり、ハープスターの祖母にあたる名牝です。「一本の線の上を走るような、美しい走りをする馬でした」と武豊騎手はベガのことを振り返ります。なぜジョッキーが一本の線の上を走っているような感覚になるかというと、ベガの馬体の幅がそれだけ薄く、両脚(前脚も後ろ脚も)がほぼ同じラインの上に着地して走っていたからでしょう。

スプリンターによくある、首が太くて、馬体の幅が厚い馬であれば、どうしても左右の脚の着地点は異なり、乗っている者としては、太いレールの上を走っているような感じになります。一本の線の上を走るような軽快さではなく、両脚で広く地面を捉えているような力強い走りになります。たしかにベガは美しい走りをする馬でしたが、どちらがジョッキーにとって乗りやすいかというと、首が太くて安定感のある馬ということなのですね。

今週のチャンピオンズカップに出走するルヴァンスレーヴは、パッと見ただけで、首が他馬よりも圧倒的に太く、いかにも乗りやすそうです。昔、マイクタイソンというボクサーがいて、どこからが顔で、どこからが首なのか分からないぐらい、首が太かったのを覚えていますが、まさにマイクタイソンのような首をしています。典型的なパワータイプのダート馬であり、ダート馬になるべくして生まれてきたダート馬なのでしょう。ミルコ・デムーロ騎手が「これまで乗ったダート馬の中で一番強い」とコメントする気持ちも分かる気がします。そこには最高に乗りやすいという、ジョッキーとしての感覚も含められているはずです。ダートのチャンピオンを決める争いで、この馬体の馬に本命を打たないわけにはいきません。

Championsc2018wt


| | Comments (0)

チャンピオンズCを当てるために知っておくべき3つのこと

Championsc

■1■スピード&器用さ優先
かつて行われていた東京競馬場の2100mダートというコースは、スピードだけで押し切ることは難しく、マイラータイプの馬にとっては厳しい条件であった。2000mまでならゴマカシが利くが、わずか100mの違いでマイラータイプの馬はバテてしまったのだ。もちろん、スピードがなければ速いペースについて行くことはできないが、勝ち切るためにはそのスピードを支える豊富なスタミナが必要であった。

しかし、舞台が阪神1800mダート、そしてさらに2014年から中京1800mダートに移り変わったことにより、東京の2100mダートほどにはスタミナが要求されなくなった。もちろん、速く厳しいペースになるので、スピードだけでは押し切れないが、どちらかというとスピードに富んだマイラータイプの馬にも勝つチャンスが訪れるということだ。そして、4つコーナーと小回りコースということを考えると、勝ち切るためには上手く立ち回れる器用さも求められる。

■2■関西馬有利
ただでさえ西高東低の状況が続く中、開催競馬場が関東から関西圏に移った以上、関西馬にとって条件はさらに有利になった。長距離輸送を考えなくてよい分、あと1本追えたり、また手加減なしに攻める調教を施すことが出来るだろう(栗東からは当日輸送、美浦からは前日輸送になる)。ダート競馬はどの馬も最後はバテて、それでもそこからもうひと伸びすることを求められるので、輸送を考慮した軽い仕上げではなく、ビッシリと仕上げられた馬でないと苦しい。

■3■3歳馬にとっては厳しい戦い
阪神競馬場に開催地を移した2008年より、3歳馬の斤量が55kg→56kgとなった。11月から12月に開催時期が変更されたことによる措置だろうが、この1kgが3歳馬にとっては大きな負荷となる可能性は高い。たとえ日々成長著しい3歳馬とはいえ、この時期に歴戦のダート古馬とぶつかるのに1kgの斤量差は少ない。現に2008年はカジノドライブが6着、サクセスブロッケンが8着と大敗した。この2頭が翌年明けのフェブラリーSで1、2着したことからも、3歳冬の時点で古馬と戦うことの厳しさが分かるだろう。

| | Comments (0)

秋華賞よりも楽な競馬で勝った


ジャパンカップ2018―観戦記―
意を決していたのが伝わってくるように川田将雅キセキが先頭に立ち、前半1000mが59秒9、後半1000mが57秒2という超スローペースで流れた。全体のタイムは2分20秒6という、従来のレコードを1.5秒も更新する速いものだが、速い時計の出る馬場状態であったことが全てで、レース全体のレベルは決して高くない。数字ではなくレース内容だけを見れば、単なる行った行ったのレースにすぎない。誤解を招くかもしれないが、それはアーモンドアイが強くないという意味ではなく、絶好のポジションを走ったアーモンドアイにとってみれば秋華賞よりも楽な競馬であったということだ。

衝撃的なレコードタイムばかりが注目されてしまうが、こんなにも速い時計を出す必要性がどこにあるのだろうか。速い時計が出る馬場=硬い馬場=故障が多い馬場ではないにしても、あまりにも世界の基準から外れた特殊な馬場であることは確かである。たしかに世界レコードが出れば、世界の注目を集めることはできるし、JRA馬場造園課の技術力の高さを証明することもできるかもしれない。しかし、競馬において、速いことと強いことは別ものである。内輪の関係者が擁護するのは分かるが、とても世界に門戸を開いているとは思えないのが現実である。走りやすいことをあまりにも追求しすぎると、強さが奪われてしまうということである。

牝馬3冠に次いで4冠目となったアーモンドアイは、普通に回ってくるだけでジャパンカップを勝ってしまった。好スタートを決めて、そのまま2番手を進んだクリストフ・ルメール騎手の好判断はさることながら、アーモンドアイは折り合いを欠く素振りも全く見せず、実にリラックスしてスムーズに走っていた。この後のことを考えず、マイナス8kgとキッチリと仕上げられて、馬自身も絶好調であったのだろう。レース後も涼しい顔をしているように、まだまだ本気で走っていない、余力のある勝ちっぷりであった。これだけ強いと選択肢が広がりすぎて、来年はどこのレースを狙うべきか悩ましい。個人的にはドバイから始動して春は国内、秋は凱旋門賞ではなくブリーダーズカップを目指してもらいたい。

ルメール騎手は、スタートしてからゴールまで、まるでフェラーリに乗っているような心地よさであったろう。前走の秋華賞はポジションが悪く、厳しいレースを強いられたが、今回は内枠を引き当てたこともあり、何も苦労することなく最後の直線に向いてスパートをかけることができた。直線半ばでステッキを入れたときの、もうひと伸びの鋭さは筆舌に尽くしがたいはず。それは馬に乗っているのとは思えない移動であったのだろう。日本で一番強い馬に日本で一番上手い騎手が乗るとこうなるのだ。

キセキは今回も積極的に前に行き、力を出し切ってみせた。菊花賞を後方からの捲り勝ちした馬が、逃げ馬になって復活するのだから、競馬は面白い。不良馬場でG1レースを激走した疲労がようやく抜けて立ち直ってきたことに加え、脚質転換を図ったことでキセキが精神的にリフレッシュして走れていることも好走の要因である。乗り替わってから、思い切った騎乗でキセキを復活させた川田騎手の手腕には脱帽する。騎手の乗り方次第で、馬の気持ちの変化にまでつながってしまうということである。

スワ―ヴリチャードは外枠スタートから内に切れ込み、道中は絶好のポジションを走っていたにもかかわらず、最後の直線では伸びあぐねてしまった。前のとの差を詰めることができなかったばかりか、最後は突き放され、この秋は春ほどの勢いに欠ける。血統的に気持ちの難しいところが表出してしまったのだろか。デムーロ騎手は、スタートから第1コーナーまでのポジショニングは見事であり、勝っていれば神騎乗と称されても不思議ではない。


| | Comments (1)

2頭の名牝を分かつもの

Jiromaru

エアグルーヴから始まる僕の名牝物語は、ウオッカやダイワスカーレット、ブエナビスタ、ジェンティルドンナと続き、そしてアーモンドアイに受け継がれていきます。もちろん、ここに挙げた馬以外にも、名牝と呼ばれるべき存在の牝馬たちはたくさんいますが、僕の中でのひとつの基準となっているのは、牡馬と戦っても引けを取らなかったばかりか、牡馬をも圧倒したということです。

ここで突っ込みが入るのは百も承知です。アーモンドアイは桜花賞、オークス、秋華賞と、まだ牝馬3冠レースを制したばかりで、牡馬の一線級と交わったことがないではないかと言われても仕方ありません。たしかにそうなのですが、僕にとっては、アーモンドアイが牡馬に通用するかどうかは問題ではなく、すでに名牝の殿堂入りを果たしてしまっているのです。つまり、牝馬や牡馬といった次元を超えていると考えているということです。

先ほど挙げた名牝たちの中にも、様々な馬体のタイプの牝馬がいます。エアグルーヴやウオッカは牡馬顔負けの肉体を有して、牡馬と真っ向からぶつかって勝利を重ねました。ダイワスカーレットは兄ダイワメジャーの女性版という感じで、牝馬らしいところを残しつつありました。ブエナビスタは牝馬らしい線の細さがあり、バネの良さと柔らかさ、気持ちの強さで勝負しました。最も記憶に新しいジェンティルドンナは、姉ドナウブルーをふた回りは大きくしたのではと思えるほどの、筋肉が発達した見事な馬体を誇っていました。

それに対して、アーモンドアイはこれらの名牝の中でも、実に牝馬らしい、どこにも大げさなところはないにも関わらず、走ることだけに特化したような、無駄のない馬体です。正直に言うと、アーモンドアイということを伏せられて馬体だけを見せられたとしても、特段に良いとは思えず見落としてしまうはずです。シルクホースクラブのパンフレットを引っ張り出してきて、アーモンドアイの1歳時の写真を見てみたのですが、やはり何度見ても、あの頃に戻ってみても、アーモンドアイに出資する自信はありません。

最近の名牝2頭、ジェンティルドンナとアーモンドアイを比べてみても、これだけ時代が近いにも関わらず、まったく異なるタイプの名牝であることが分かります。ジェンティルドンナは牝馬3冠レースを獲得したのち、ジャパンカップに挑戦し、あのオルフェーヴルとの壮絶な叩き合いを制して頂点に立ちました。あのレースの直線の攻防は今でも覚えています。ジェンティルドンナが内からオルフェーヴルを張り出すようにして先頭に立ち、そのまま抜かせなかったのです。オルフェーヴルは凱旋門賞を2年連続で2着した最強の牡馬ですよ。それを3歳牝馬が弾き出して勝利するなんて、競馬関係者にとっては驚き以外の何ものでもありません。それほどに肉体的に強い馬であったということです。

アーモンドアイは決してそのようなタイプではありません。牡馬と肉体的に真っ向勝負を挑んで勝つというよりも、バネの強さや身体の柔軟性を生かした走りで、とにかく脚の速さが抜けているため、スピードに乗り始めると誰もついてこられないのです。ある種、ディープインパクトに似た、突然変異的な脚の速さ。ジェンティルドンナが牡馬と同じポジションで、同じようなタイミングで動き、同じように直線でゴールを目指すのに対し、アーモンドアイは馬群から少し離れたところを後ろから進み、勝負どころから一気にスパートをかけて、最後の直線では1頭だけ外を走って突き抜ける。そのような競馬で牡馬を負かすはずです。

アーモンドアイとジェンティルドンナ、牡馬を相手に勝利することは同じでも、肉体的な違いが勝ち方の違いにつながるということです。名牝アーモンドアイにはアーモンドアイらしい勝ち方を極めてもらいたいと願います。

Japancup2018wt


| | Comments (4)

ジャパンカップを当てるために知っておくべき3つのこと

Japancup

■1■日本馬のレベルアップ
ジャパンカップで最も大きな問題となってくるのが、外国馬と日本馬の比較である。近年は完全な日本馬の優勢であり、日本馬が1~3着だけでなく、掲示板を独占することがあっても驚かなくなってきた。ここ十数年で、生産、調教の技術が飛躍的に向上したことによって、日本の競走馬のレベルそのものは、海外のそれと比較しても同等かそれ以上のところまで上がってきている。

日本国内における一流馬であれば、海外に出ていっても十分通用することは、古くはジャックルマロワ賞のタイキシャトル、凱旋門賞のエルコンドルパサーから、インターナショナルSのゼンノロブロイ、アメリカンオークスのシーザリオ、メルボルンCのデルタブルース、そしてハーツクライ、ディープインパクト、そして最近でいうとナカヤマフェスタやオルフェーヴルまで多くのG1ホースらが示してくれた。もちろん自分の土俵(日本の競馬)で戦うのであれば、堂々と胸を貸すぐらいの気持ちで立ち向かうことができるはずだ。

外国馬に関する情報は極めて少なく、日本の馬場で一度も走ったことがない馬の実力を推し量ることは、はっきり言って非常に難しい。それでも、ひとつだけ大きなものさしを示すとすれば、「力をつけた日本馬に地の利がある以上、外国馬は余程の実力、実績を持った馬でないとジャパンカップで勝ち負けにはならない」ということになる。日本の軽い馬場が合いそうだとか、招待されたからなどというレベルの外国馬では勝負にならないところまで日本馬のレベルは上がってきている。
ちなみに、外国馬に関して述べると、海外遠征未経験馬は疑ってかかるべきである。今回のジャパンカップ挑戦が初めての遠征になるような馬では、よほど能力が抜けていないと極東の地での激しい戦いを勝つことは出来ない。ヨーロッパの馬でヨーロッパの外に遠征した経験がない馬も同じである。

■2■凱旋門賞、ブリーダーズC馬は消し ジャパンカップの前にはヨーロッパで凱旋門賞、アメリカでブリーダーズカップとG1レースの中のG1レースが行われている。海外の馬は当然そちらを目標に出走するため、ジャパンカップにはピークを過ぎた状態で出走してくることが多い。

特に、凱旋門賞、ブリーダーズCを勝った馬は、ほぼ間違いなく調子落ちでの出走となるはず。ピークの仕上げで臨まなければ、凱旋門賞やブリーダーズCといった大レースは勝てないため、勝った勢いでジャパンカップに挑戦してきても、結局、状態は下降線を辿ることになるのだ。ブリーダーズカップを勝ったコタシャーン、凱旋門賞を勝ったエリシオ、モンジュー、デインドリーム、ソレミアなどがあっさりと敗れてしまったのは、明らかにピークを過ぎた状態で出走してきたからである。また、凱旋門賞を勝つ馬は、深い芝で走れるだけのパワーとスタミナが勝っている馬である(今年の凱旋門賞は別)。軽い芝でスピードと瞬発力を要求される日本の競馬には合わないことが多いだろう。また、ブリーダーズCを勝った馬はローテーション的に厳しい。死力を尽くして大レースを勝った後に、遠征を含めて、もうひとつG1レースで勝つことは難しい。

逆に言うと、凱旋門賞、ブリーダーズCで負けてしまった馬の巻き返しは期待できるということだ。

■3■迎え撃つのは4、5歳馬
過去10年の勝ち馬は、4歳馬が5勝、続いて5歳馬と3歳馬が2勝、6歳以上の馬は0勝となっている。ジャパンカップのレベルが上がったことにより、肉体的に最も充実する4、5歳馬が圧倒的に有利なレースとなった。百戦錬磨の外国馬を迎え撃つのは日本の4歳馬という図式が成り立つだろう。

また、ジャパンカップを勝ち切るためには高い壁があって、日本馬、外国馬に関わらず、連対率が50%を切るような馬では厳しい。高い競走能力と、どのような状況や環境にも対応できる資質の持ち主であることが問われるのだ。


| | Comments (0)

勝ちポジが最大の勝因


マイルCS2018―観戦記―
内からアルアイン、ロジクライが押し出されるようにして先頭に立つかと思いきや、外からこちらも押し出されるようにしてアエロリットがハナを切る形で、まるで中距離戦のようにゆったりとした序盤でレースは始まった。それは最後の直線に向くまで変わることなく、レースが終わってみれば、前半マイルが47秒1、後半マイルが46秒2という、G1のマイル戦としては考えられないほどのスローペース。1、2、3番の馬が1、2、3着したように、内が伸びる馬場であったこと以上に、馬群の内で脚をためた馬が極めて有利になる展開であった。

勝ったステルヴィオは、スローペースの内の2、3番手という基本の勝ちポジ(勝つためのポジション)を走ったことが最大の勝因である。一列後ろのポジションであれば、ひとつ着順が下がるという繊細なポジション争いを制したのも、1番枠を引いたことが全て。この馬自身、マイラーとしての資質が高く、夏を越して古馬にも通用する成長を遂げたこともあるが、今回は展開とポジションに恵まれての勝利であることは間違いない。ロードカナロア産駒の成長力を裏付ける勝利と言うには、やや物足りなさの残るレースレベルであった。

ウイリアム・ビュイック騎手は大仕事をやってのけた。スタートしてから普通に馬を出して、ステルヴィオのペースで走らせ、直線に向いて追い出したら勝ってしまった、と言えばその通り。陣営からは抑えて後ろから差し脚を生かすという指示が出ていたが、スタートしてから変に抑える必要がないと判断して、素直に行かせたことが吉と出た。一瞬の判断の良さではあるが、簡単なようで簡単ではない。自信と経験がそうさせたとも言えるし、また海外の競馬場で無心に乗ったことがそうさせた面もあるのではないか。

昨年の覇者であるペルシアンナイトは、もうひとつ前のポジションであったならというところだろう。ひとつ枠番が違うだけで、全てが勝ち馬の後手に回ってしまい、最終的にも頭ひとつ競り負けてしまったのだから、競馬における枠順の差は大きい。レースの綾を抜きにすれば、ペルシアンナイト自身は力を出し切っているし、ミルコ・デムーロ騎手としても完璧な立ち回りをしている。同じことはアルアインにも言えるが、この馬にとっては瞬発力勝負になってしまい、生粋のマイラーに切れ負けしてしまった。

この展開の中、後方から差して差を詰めたカツジとミッキーグローリーの兄弟は、揃って切れ味があることを証明した。もう少し前目のポジションを楽に走られるようになれば、持ち前の瞬発力がさらに生きるはず。今回のようなレースで後方から行けば、どれだけ走っても、掲示板に載るまでがやっとである。

1番人気に推されたモズアスコットは見せ場なく大敗を喫してしまった。前進気勢に欠けるところを見せ、走ったポジションも悪く、最終コーナーでは他馬と接触するシーンもあり、最後まで脚を使うことができなかった。安田記念までタイトなローテーションで使われてきたことの反動が出ている面もあるかもしれない。牝馬ながらも2番人気に推されたアエロリットも馬群に沈んだ。切れ負けしてしまったというよりは、この馬自身が自分の脚を使えておらず、長距離輸送がこたえたのか、精神的にムラがあるところが出てしまった。

| | Comments (0)

冬場のレース毛艶を重視する

Jiromaru

サラブレッドは冬場になると冬毛が伸びるため、どうしても毛艶が悪く見えてしまうことは仕方ありません。しかし、レースを間近に控えた馬が、あまりにも毛艶が悪いのはいただけません。冬毛が生えてきて毛艶が冴えないのは、内臓が休眠状態に入っているということを意味するからです。内臓機能が優れていて、新陳代謝が活発な馬ならば、冬でもほとんど冬毛が生えることなく毛艶が悪くなることはありません。あのサクラローレルが冬場でもピカピカに毛艶を輝かせていたのは有名な話です。

毛艶は馬の内臓の状態を映し出す鏡です。内臓の状態が良ければ、毛艶はピカピカに輝きます。逆に、疲労から内臓に問題のある馬の毛艶はくすんでしまいます。ブラッシングをすれば、ある程度取り繕うことは出来ますが、滲み出てくるような毛艶の良さは、やはり内臓の状態が良くないと表れてこないものです。さらに毛艶が良いということは、皮膚が薄いということもつながります。皮膚が薄い馬は、総じて馬体が柔らかく、伸びのある走りをすることができるのです。

冬場のレースは、毛艶の良し悪しが如実に表れます。寒くなるにつれて、新陳代謝が悪くなり、内臓の働きが活発さを失い、皮膚にも硬さが出て、明らかに毛艶が冴えない馬が増えてくる一方、冬場にもかかわらず、ピカピカの毛艶を誇る馬もいるのです。冬場はそうした臨戦態勢が万全であることが伝わってくる馬を狙いたいものです。

毛艶の輝きを見る以外に、毛艶の良し悪しを見極める他の方法として、馬体に銭型の斑点が映るときには、毛艶が良いサインであることが挙げられます。内臓の調子が良かったり、きっちりと仕上げられたことで皮膚が薄くなってくると、不思議なことに内側から小判の形をした模様が外に浮かび上がってくるのです。

今週行われるマイルチャンピオンシップの出走馬の中で、全身に斑点が浮かび上がっている馬がいます。ミッキーグローリーです。前走を快勝した勢いと調子の良さをそのまま持ち込んできていることが毛艶から伝わってきます。

もうひとつ、芦毛の馬が黒く映るときは毛艶の良いサインです。普通の毛色の馬であれば、パッと見た瞬間に毛艶を見分けることができます。しかし、芦毛の馬に限っては、白毛が差し毛のように混じって入っているため、毛艶の良し悪しを見分けることが非常に難しい。皮膚のなめらかさや光具合から、毛艶を判断するのが難しいのです。

そこで、芦毛の馬の毛艶については、いつもより黒く見えるかどうかという見方をします。芦毛にも白さの度合いがあるので、他の馬と比べて黒く見えるかどうかではなく、1頭の馬を見る時に、いつもと比べて黒く見えたときは毛艶が良いということです。アエロリットは前走の毎日王冠よりもさらに黒味を帯びていて、毛艶の良さは文句なしです。

毛艶の良さだけで判断すると、ミッキーグローリーとアエロリットは迷うところですが、京都競馬場で行われるということや人気も含めて、ミッキーグローリーを思い切って狙ってみたいと思います。大型馬だけに、馬体が出来上がってくるのに時間が掛かってしまいましたが、じっくりと使いながら完成の域に近づいてきています。さすが国枝厩舎ですね。ディープインパクト産駒らしい、鋭い末脚を繰り出してくれるのではないでしょうか。

Milecs2018wt


| | Comments (4)

京都芝1600m

Kyoto1600t1

向こう正面の直線を2コーナー側に延長したポケットからのスタート。第1コーナーとなる3コーナーまでの距離は711mと長く、逃げ馬が気分よく行ってしまうとオーバーペースになりやすい。しかし、3コーナー過ぎてからは下り坂となるため、多少のハイペースで行ったとしても、前もなかなか止まらない。結果として、平均ペースのレースになりがちで、実力どおりの決着となることが多い。力さえあれば、展開にはあまり左右されることのないコースといえる。

京都の1600mコースには内回りと外回りがあり、G1であるマイルチャンピオンシップは外回りを使って行われる。外回りコースは、4コーナーで内回りコースと合流するため、内にポッカリとスペースが開きやすい。そのため、直線で前が詰まる心配がほとんどなく、差し馬にとっては安心して乗れるコースである。

第1コーナーまでの距離が長いため、枠順による有利・不利はほとんどない。あるとすれば、最初の直線において、ポケットの直線から本線に入る際、わずかに内の馬が窮屈になることぐらいか。とはいえ、1番枠でない限り、ほとんど気にする必要はないだろう。


| | Comments (0)

マイルCSを当てるために知っておくべき3つのこと

Milecs

■1■マイルの連対率は重要な目安
マイルのチャンピオン決定戦である以上、1600mのレースにおける連対率が50%を割っているような馬はチャンピオンとして相応しくない。1600m戦での連対率は、その馬のマイル戦に対する適性を顕著に表すからだ。

大荒れとなった平成7年は、出走馬18頭中、1600mのレースにおける連対率が50%を超えている馬がわずか2頭しかいないというレベルの低いレースであった。その2頭が、安田記念も勝ったトロットサンダーと、なんと大穴のメイショウテゾロである。このことからも、マイルチャンピオンシップにおいて、マイルの連対率がどれだけ重要なデータとなるかが分かる。マイルの連対率が50%を切っている馬は軽視すべきである。

■2■勝つためにはスタミナが必要
京都1600m外回りコースで行われるため、スピードだけでは押し切れないレースである。前4走ともに1600m未満の距離を使っていたスプリンタータイプの馬では、最後の直線でスタミナ切れすることになる。スプリンタータイプの馬では勝ち切ることは難しい。勝つためには、中距離を走り切れるだけのスタミナが必要とされる。1600m以上の中距離レースでの実績は必要。 

■3■サンデーサイレンスの血を引く馬?
過去12年のレースラップ(下参照)を見ても、昔は前半から飛ばす馬がいてハイペースになることが多かったが、ここ最近は、さすがにスローにはならなくても、全体的にフラットな落ち着いた流れになる傾向が強い。1分32秒台後半から33秒前半という全体時計は変わらないということは、前半が厳しい流れになる昔のレースの方がレベルは高かったということになる。

そのため、ズブズブのスタミナ勝負になることは少なく、スッと先行して4コーナーを持ったまま先頭で押し切れるぐらいスピードに富んだ馬、もしくは瞬発力勝負に長けた馬にとっては競馬がしやすいレースになる。デュランダル、ハットトリック、ダイワメジャーと、サンデーサイレンス産駒が5年連続でこのレースを勝ったのも、そういう特性(軽さと瞬発力)こそが問われるからである。もし血統的に狙いを絞るとすれば、ありきたりではあるが、サンデーサイレンスの血を引く馬ということになる。

12.3-10.6-11.1-12.0-11.5-11.6-11.2-12.4(46.0-46.7)M
1:32.7 ダイワメジャー
12.6-10.6-11.2-12.0-11.6-11.5-11.3-11.9(46.4-46.3)M
1:32.7 ダイワメジャー
12.5-10.6-11.3-11.9-11.6-11.4-11.6-11.7(46.3-46.3)M
1.32.6 ブルーメンブラッド
12.1-10.9-11.8-12.4-11.5-11.4-11.2-11.9(47.2-46.0)S
1.33.2 カンパニー
12.1-10.7-10.9-11.6-11.4-11.1-11.9-12.1(45.3-46.5)H
1.31.8 エーシンフォワード
12.4-10.8-11.2-12.3-11.9-11.8-11.6-11.9(46.7-47.2)M
1.33.9 エイシンアポロン
12.5-11.1-11.4-11.9-11.3-11.3-11.5-11.9(46.9-46.0)M
1.32.9 サダムパテック
12.5-11.1-11.5-11.7-11.5-11.2-11.4-11.5(46.8-45.6)S
1.32.4 トーセンラー
12.0-10.4-11.3-11.6-11.4-11.5-11.3-12.0(45.3-46.2)M
1:31.5 ダノンシャーク
12.6-10.9-11.1-12.5-11.9-11.1-11.5-11.2(47.1-45.7)S
1.32.8 モーリス
12.3-10.9-11.2-11.7-11.4-11.7-11.6-12.3(46.1-47.0)M
1.33.1 ミッキーアイル
12.2-10.8-11.6-12.1-11.9-11.5-11.6-12.1(46.7-47.1)M
1.33.8 ペルシアンナイト

| | Comments (0)

騎手が違えば、結果も違う


エリザベス女王杯2018―観戦記―
昨年のリプレイのようにクロコスミアが先頭に立ち、前半1000mが61秒4、後半1000mが59秒2という超スローペースをつくりだした。道中で脚をしっかりとためられた馬や前目のポジションを走れた馬にとって有利であり、後ろから行き過ぎては勝負にならないレースとなった。分かっていても後ろから行って同じように負けてしまう日本人騎手と分かっているから積極的にポジションを取りに行く外国人ジョッキーとの差は、最後の着順という形で如実に現れることになる。もし仮に騎乗馬に明らかな力差があるとすれば、その差を少しでも縮めるために日本人騎手こそが動かなければならないはずである。

リスグラシューはようやくG1のタイトルを手にすることができた。マジックマンの手を借りてというありがちな勝利ではあるが、リスグラシュー自身の成長も大きい。特に昨年のエリザベス女王杯から今年にかけての馬体の成長が著しい。馬体重にしておよそ20kg。これまで惜しくも届かないレースが続いていたが、今回は最後の直線で1頭だけ異次元の伸びを見せた。本来はこれぐらい中団から追走しても、末脚の破壊力は鈍らない馬なのであろう。

ジョアン・モレイラ騎手は日本で初めてのG1レース制覇となった。これほどのジョッキーであっても、異国での初G1勝利は嬉しいものに違いない。リスグラシューの背に張りつくようにして乗り、道中は馬群の真ん中で我慢を重ね、他の有力馬が先に動いても気にすることなく脚をためることに専念していた。その結果として、1頭だけ3ハロン33秒台の末脚を繰り出すことになり、リスグラシューの良さを生かし切る見事な騎乗であった。たまたまリスグラシューが充実してきたときにモレイラ騎手が乗ったと考えるか、それともモレイラ騎手が充実してきたリスグラシューの力を出し切ったと見るかはあなた次第である。

クロコスミアは無心で乗られたことで、シンプルに自身の力を発揮することができた。距離も2200mぐらいある方が良く、最後の直線が平坦なのも合っている。全ての条件が重なるのがエリザベス女王杯ということだ。1番人気のモズカッチャンは内の3番手を進み、昨年の再現をするかと思わせる騎乗であった。それでも伸び切れなかったのは、この馬自身がやや調子を落としていているからであろう。馬体は充実してきているが、その分、脚元に不安があるのではないだろうか。

レッドジェノヴァはスタートしてから第1コーナーのところで、外から発送したモズカッチャンに前に入られてしまったことが痛かった。ひとつ前にいれば、もう少し早目から動くことができたはずだが、結果的に最後の直線に向いてから追い出す形となり、上位の馬たちに切れ負けしてしまった。瞬発力よりもスタミナ型の馬だけに、もう少し早目に動きたかったはず。序盤のスタミナロスを避けたい気持ちは分かるが、明確な意思を持ってポジションを取りにいかなければ、外国人ジョッキーたちに先を越されてしまうのである。

ノームコアは人気になりすぎていた。紫苑ステークスを勝ったばかりの馬がG1初挑戦でいきなり古馬に勝てるわけがない。クリストフ・ルメール騎手が乗っていたことも過剰人気の要因のひとつだが、さすがに相手が強すぎた。この先、少しずつ強くなりそうな馬だが、現時点での5着は褒められるべきである。ルメール騎手も5週連続G1制覇とならなかったのは残念だが、この馬の力は出し切っている。


| | Comments (0)

距離適性は馬体のシルエットで判断する

Jiromaru

メルボルンカップを観に、オーストラリアに行ってきました。10年以上前から、ずっと観に行きたいと思っていましたので、ようやく念願が叶ったということです。メルボルンカップが行われる日はカップデーと言われ、オーストラリア全体が休日となり、国民全員でレースを見守るほどのビッグイベントなのです。レース当日の競馬場には、10万人を超える着飾った男女が集います。どちらが良い悪いではなく、日本では競馬はギャンブル色が強いのに対し、オーストラリアではスポーツとして観戦されていると感じました。

メルボルンカップデーの翌日、オーストラリアのリーディングトレーナーであるダレン・ウィアー調教師に話を聞きに行ってきました。ダレン・ウィアー調教師は2013―14年のシーズンから躍進を遂げ、2015-16のシーズンでは全豪で347・5勝(0.5は同着)を挙げて新記録を打ち立てました。名実共に、オーストラリアで最高の調教師です。最近では、トーセンスターダムやブレイブスマッシュ、トーセンバジルなどの日本馬が多く移籍して、向こうで再生して復活を遂げていますね。

調教に対する考え方や施設の活用法を伺っている中で、馬の体型に話は及びました。トーセンスターダム(ディープインパクト産駒)は手脚も長く、胴部にも伸びがあって、雄大で立派な馬体を誇っていたのに対し、ブレイブスマッシュはパッと見たところ、胴部が短くて、筋肉量の多い馬体をしていたのでスプリンターだと判断したそうです。オーナーサイドからはマイルから2000mぐらいの距離で使ってほしいとオーダーされていたのですが、馬体を見て短距離路線に切り替えたとのことです。結果的にその判断は正しく、現時点でブレイブスマッシュはスプリントG1を2勝し、世界最高額賞金のG1レース、ジ・エベレスト(1200m)でも3着に入りました。

どういう馬体の馬が走るのですか?と単刀直入に質問してみたところ、「ルールはない」とう表現が返ってきました。こういう馬体の馬が走るという明確な法則やマニュアルのようなものは存在しないということです。当たり前のことですが、様々な馬体をした馬が走り、また走らないのです。しかし、その他の活躍馬の話を聞くにつれ、馬に対する見かたが言葉の端々に表れてきて、僕はその断片を拾い集めてみたところ、ダレン・ウィアー調教師は馬の特性を体型(馬体のシルエット)で判断しているのだと分かりました。部分的な筋肉の付き方とか気性とか脚の付き方などには全く触れることなく、体長や体高といった馬体の長さや、部分的な首や脚の長さ、そして馬体の幅など、パッとみたときの体型(馬体のシルエット)を重視しているようです。

今週行われるエリザベス女王杯は京都競馬場の芝2200mで行われます。春に行われる牝馬限定G1レース・ヴィクトリアマイルがマイル戦で、スピードや瞬発力を競うのに対して、エリザベス女王は基本的にスタミナや底力が問われる位置づけのレースです。もしダレン・ウィアー調教師が京都競馬場の芝2400m戦で走りそうな馬を選ぶことになったならば、おそらく体型(馬体のシルエット)をパッと見るはずです。そして1頭だけ、レッドジェノヴァの写真を指差しながら、「この馬は胴部にも長さがあって、手脚も長いので、長距離が得意そうなステイヤーの体型だね」と言うはずです。それ以外の牝馬たちに対しては、マイラー体型の馬がほとんどであり、下手をすると短距離の方が合いそうな馬もいるねと正直にコメントするのではないでしょうか。道中が淀みなく流れ、スタミナや底力が問われるレースになり、レッドジェノヴァのステイヤーとしての特性が開花されることを期待して、この馬に僕も本命を打ちたいと思います。

Elizabeth2018wt


| | Comments (2)

«京都芝2200m